診療予約 アクセス

ブログ

漢方と出会ったお話②

データ至上主義への違和感

香港から帰国しても、あの衝撃的な漢方薬の即効性が頭から離れませんでした。
しかし当時の私は、大学院を卒業したばかりで、統合失調症の治療薬が脳内でどう作用するのか、副作用との関連、頭部MRIによる脳体積の測定といった研究に没頭しており、臨床でも漢方とはまったく縁のない生活を送っていました。治験に参加し、データと毎日向き合う日々でした。

ちょうどその頃、「エビデンス・ベースド・メディスン(EBM)」 という言葉が広まり始めました。
“最良の治療は経験ではなく、科学的根拠に基づくべきだ” という考えが浸透し、臨床試験のデータこそが信頼に足る情報とされる時代に突入していきました。

しかし私は、治験に関わる中で、プロトコール作成の段階から解析手法に至るまで、ある程度「どちらにも都合よく見えてしまうデータ」が作れてしまう現実を知っていました。そのため、「エビデンス」という言葉にどこか割り切れない違和感を持っていたのです。

精神科医療では、患者さんの声の強さ、表情、ちょっとした挙動など、数値化できない部分をどれだけ丁寧に感じ取れるかが重要だと私は考えていました。
そうした理由から、少しずつ治験や研究から距離を置くようになっていきました。

関連記事

ページ上部へ戻る