― 傷病手当金の次に迷いやすいポイント ―
うつ病、不安障害、適応障害などで休職し、
そのまま退職に至るケースは決して珍しくありません。
その後によく出てくる質問が、
「精神疾患で退職した場合でも、失業保険はもらえますか?」
答えは 「条件を満たせば可能」 ですが、
精神疾患の場合には特有の注意点があります。
まず大前提:失業保険の条件を整理
失業保険を受給するには、次の条件が必要です。
- 失業している
- 働く意思と能力がある←特に重要!!
- 積極的に求職活動をしている
ポイント
「診断名」よりも、
“今、働ける状態かどうか” が問われます。
精神疾患で特に注意が必要な理由
精神疾患の場合、次のズレが起こりやすいからです。
- 本人:
「生活費が不安だから、とりあえず失業保険を申請しよう…」 - 医師:
「まだ規則的に朝起きられていないし就労は難しいのでは?」 - ハローワーク:
「求職活動ができるか?」
→この三者の認識が噛み合わないと、
手続きが止まる・トラブルになることがあります。
注意点①「働けない状態」のままでは失業保険は出ない
精神疾患で、
- 強い抑うつ
- 不安・パニックが頻回
- 外出や対人接触が困難
このような状態下の場合、
原則は失業保険の対象外です。
→この期間は
- 傷病手当金
- 失業保険の受給期間延長
を使うのが原則です。
注意点②「診断名」より「就労可否」が重視される
ハローワークは、
- うつ病かどうか
- 双極性障害かどうか
といった診断名そのものはあまり見ていません。
重視されるのは、
- 求職活動ができるか
- 面接に行けるか
- 継続的に働けそうか
つまり、実務的な就労能力を見られます。
注意点③ 医師の意見書・病状証明書を求められることがある
精神疾患の場合、
- 「本当に働けますか?」
- 「無理をしていませんか?」
という確認のため、
医師の意見書や病状証明書を求められることがあります(用紙はハロワークでもらえます)。
よくある書類
- 受給期間延長用 病状証明書
- 延長解除用 病状証明書
- 就労・求職活動可の意見書
→ 書類の目的(延長か解除か)を間違えると、
窓口で差し戻しになることがあります。
注意点④「軽作業なら可」「短時間なら可」はグレーになりやすい
精神科ではよくある判断ですが、
- フルタイムは難しい
- 配慮があれば可能
この状態は、ハローワークではやや扱いが難しいことがあります。
→実務上は
- 「求職活動は可能」
- 「一般就労を前提とするか」
が整理されていないと、
受給がスムーズに進まないことがあります。
注意点⑤ 無理な求職活動は再発リスクになる
制度上は問題なくても、
- 失業認定日のプレッシャー
- 「活動実績を作らなきゃ」という焦り
- 面接でのストレス
これらが、症状再燃の引き金になることも少なくありません。焦らないことです。
→実際の診療では
「もう少し休んでから失業保険へ切り替える」
という判断が、結果的に安定するケースも多いです。
よくある質問
Q. 精神疾患で自己都合退職でも失業保険は出る?
→ 出ます
基本は精神疾患によるものも、他の病気と同様に自己都合退職です。
会社が療養中に倒産した、問題をおこして懲戒解雇になった等、会社都合退職は極めてまれだと思った方が良いです。
Q. 通院中でも失業保険はもらえる?
→ 可能です
- 通院=NGではない
- 求職活動ができるかどうかが基準です
慢性疾患を例にするとわかりやすいです。例えば糖尿病で血糖値のコントロールのために入院、そのまま退職したとします。血糖値は安定しても糖尿病の定期通院は継続になることが普通ですね。血糖値が安定して現在は働けるかどうかが大事で通院自体は基本的に問題になりません。
患者さんに伝えたいポイント
私の外来での説明は、
「失業保険は“働ける状態”の人の制度です。
まだ難しければ、延長を使いましょう。」
と伝えています。
回復の段階に合わせて制度を選ぶことが大切です。
まとめ
- 精神疾患で退職しても、失業保険は条件を満たせば可能
- 重要なのは「診断名」ではなく 就労可能性
- 無理な切り替えは、症状再燃のリスクあり
- 傷病手当金・受給期間延長をうまく使うことが重要