― 不安に強いSSRI、その使いかたと特徴 ―
抗うつ薬の中でもSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)は、現在の精神科診療の中心的存在です。その中でも「エスシタロプラム」(商品名:レクサプロ)は、「不安症状に強いSSRI」として知られ、うつ病だけでなく各種不安障害で広く使用されています。
今回は、エスシタロプラムの特徴を、他のSSRIと比較しながら整理してみます。
不安症状に対する効果が高いSSRI
エスシタロプラムは、セロトニントランスポーターへの選択性が非常に高いことが特徴です。
そのため、
- 全般性不安障害
- パニック障害
- 社交不安障害
- 抑うつに伴う不安・焦燥
といった「不安が前景に立つ症例」で効果を発揮しやすいSSRIとされています。
臨床的にも
「気分はそれほど落ちていないが、不安や緊張が強い」
「他のSSRIではそわそわ感が強く出た」
といったケースで選択されることが多い印象です。
他のSSRIと比べた位置づけ
SSRI全体を俯瞰すると、エスシタロプラムは以下のような立ち位置にあります。
- 刺激性・賦活感:比較的少ない
- 不安の悪化(初期増悪):やや起こりにくい
- 効果発現:穏やかだが安定
- 用量調整:シンプル(5mg,10mg,15mg,20mg,→ちなみに日本人の平均投与量は13.5mg)
パロキセチンほどの鎮静性はなく、フルボキサミンほど薬物相互作用が多くない、バランスのとれたSSRIと言えるかもしれません。
代謝と薬物相互作用(CYP)
エスシタロプラムは主に
- CYP2C19
- CYP3A4
- CYP2D6
で代謝されます。
フルボキサミンのような強いCYP阻害作用はなく、併用薬が多い症例でも比較的使いやすいのが利点です。ただし、CYP2C19の遺伝的多型や阻害薬併用時には血中濃度が上昇しやすいため注意が必要です。
半減期は比較的長め
エスシタロプラムの半減期は約27〜32時間とされており、1日1回投与で血中濃度が安定しやすい薬剤です。
この特性から、
- 飲み忘れによる血中濃度変動が比較的少ない
- 離脱症状がやや出にくい
といったメリットがあります。
副作用:QT延長には注意
エスシタロプラムで特に押さえておきたい副作用がQT延長です。
- 高用量使用時
- 高齢者
- 電解質異常(低K血症など)
- 他のQT延長薬併用時
ではリスクが高まるため、用量上限を守る事や既往歴の確認が重要です。
その他の副作用としては、
- 悪心・胃部不快感(多いですが飲み始め4日目以降は軽減する方がほとんどです)
- 眠気または軽度の不眠
- 性機能障害
など、SSRIに共通するものが中心です。
用量設定と開始量
エスシタロプラムは少量から開始しやすい薬剤です。
- 開始量:5mg または 10mg
- 維持量:10mg
- 最大量:20mg(QT延長リスクを考慮)
不安が強い症例や副作用感受性が高そうな場合は、5mg開始が無難です。
効果と忍容性を見ながら、比較的スムーズに増量できます。
まとめ
エスシタロプラム(レクサプロ)は、
- 不安症状に強い
- 薬物相互作用が比較的少ない
- 半減期が長く安定した作用
- 用量設定がシンプル
という特徴を持つSSRIです。
一方でQT延長という明確な注意点もあります。
不安が前景に立つ症例で、穏やかに効かせたいとき、またPMSにも効果が期待できます。