― 運動症状を悪化させないための考え方 ―
パーキンソン病(PD)では、不眠を合併することが非常に多くみられます。
入眠困難、中途覚醒、早朝覚醒に加え、夜間のオフ症状や不安、抑うつが背景にあることも少なくありません。
不眠治療では、睡眠を改善することと同時に、
振戦や無動などの運動症状を悪化させないことが重要です。
パーキンソン病の不眠で考えるべきポイント
PD患者の不眠治療では、以下を意識します。
- ドパミンD₂受容体遮断作用がないこと
- 錐体外路症状を悪化させにくいこと
- 夜間の転倒・過鎮静を避けること
- 高齢者でも使いやすい用量・剤形であること
この前提を踏まえて、薬剤を選択します。
パーキンソン病で使いやすい不眠治療薬
メラトニン受容体作動薬
(ラメルテオンなど)
- ドパミン系への影響なし
- 転倒リスクが低い
- 高齢者にも使いやすい
入眠困難に対して第一選択になりやすい薬剤です。
効果は穏やかですが、安全性が高いのが特徴です。
オレキシン受容体拮抗薬
(スボレキサント、レンボレキサントなど)
- 鎮静系睡眠薬と比べて筋弛緩が少ない
- ドパミン系への直接作用なし
中途覚醒や早朝覚醒にも効果が期待できます。
ただし、悪夢や日中の眠気には注意が必要です。
漢方薬(抑肝散など)
抑肝散はパーキンソン病の拘り質問行為や幻視等にも効果があります。ただし進行すると嚥下が困難な場合があるので配慮が必要になります。
抑うつ・不安を伴う場合の選択肢
ミアンセリン(テトラミドなど)
- D₂受容体遮断作用なし
- 鎮静・抗不安作用が強い
- 症状を揺らしにくい
不眠+不安・焦燥が前景のPD患者では、
比較的使いやすい薬剤です。
ミルタザピン(レメロン/リフレックス)
- NaSSA
- 抗うつ効果が明確
- 低用量で鎮静が強い
禁忌ではありませんが、
振戦や落ち着かなさが悪化する例もあり、
低用量開始・慎重な経過観察が必要です。
比較的慎重に考えたほうがよい薬剤
ベンゾジアゼピン系睡眠薬
- 転倒リスク増加
- せん妄・認知機能低下
短期使用に限るか、可能であれば避けたい薬剤です。
Z薬(ゾルピデムなど)
- 筋弛緩は弱いが転倒リスクは残る
- 高齢PD患者では注意が必要
比較表:パーキンソン病+不眠の薬物選択
| 薬剤 | 運動症状への影響 | 鎮静 | 転倒リスク | 位置づけ |
|---|---|---|---|---|
| ラメルテオン | ほぼなし | 弱 | 低 | 第一選択 |
| オレキシン拮抗薬 | 少ない | 中等度 | 低〜中 | 有力 |
| ミアンセリン | 少ない | 強い | 中 | 不安・焦燥あり |
| ミルタザピン | 症例により注意 | 強い | 中 | 抑うつあり |
| ベンゾ系 | あり | 強い | 高 | 原則慎重 |
投与時間と実践的な工夫
- 鎮静作用のある薬剤は夕方〜眠前投与
- 不眠=睡眠薬追加とせず、不安・抑うつの評価が重要
まとめ
パーキンソン病の不眠治療では、
「眠らせること」よりも
「症状を悪化させず、安全に眠れること」が最優先です。
ラメルテオンやオレキシン受容体拮抗薬を基本に、
不安や抑うつがあればミアンセリンやミルタザピンを併用するとよいと思います。