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黄連解毒湯(おうれんげどくとう)

黄連解毒湯は、古典『外台秘要』を出典とする漢方薬で、「清熱薬(せいねつやく)」に分類されます。皮膚科領域では湿疹や皮膚炎で使われることが多い一方、精神科・心療内科の臨床ではイライラ、不眠、興奮状態といった「熱」を帯びた精神症状に効果を発揮することがあります。

比較的体力があり、顔が赤く、のぼせやすいタイプが目安です。
具体的には

  • 頭が冴えて眠れない
  • 気分が落ち着かず、些細なことが気になる
  • イライラしやすく怒りっぽい
  • ほてりを伴う不眠
    といった症状が目立つ方に向いています。

動物実験では、黄連解毒湯の経口投与により

  • 海馬での局所脳血流量の増加
  • 抗炎症作用
  • 胃粘膜障害の抑制
  • 血小板凝集抑制作用
    などが報告されています。
    これらの作用が、精神的な興奮や炎症を伴う状態を鎮める一因と考えられています。

黄連解毒湯は「心火(しんか)」が亢進した状態、つまり興奮・怒り・不眠が前面に出ているケースで力を発揮します。
構成生薬の黄連や山梔子には、充血を取り、煩躁(そわそわ・落ち着かなさ)を鎮める作用があるとされ、「頭がさえて眠れない不眠」に適しています。

本剤は甘草を含まないため、甘麦大棗湯など甘草含有量の多い漢方との併用が可能なのも特徴です。
ただし、証に合わない場合は効果が乏しいため、漫然とした継続投与は避けます。

成人では1日7.5gを2〜3回に分け、食前または食間に内服します。
高齢者では減量を考慮し、妊娠中や妊娠の可能性がある場合は、治療上の有益性が危険性を上回る場合にのみ使用します。

① 悪夢を伴う浅眠の改善例
28歳男性。繁忙期になると犯罪や性的内容の悪夢が増え、睡眠が浅くなるため受診。黄連解毒湯7.5gを毎食前に開始したところ、3週間ほどで悪夢が減少。その後は繁忙期のみ眠前2.5gの内服で浅眠が改善しました。

② 甘麦大棗湯との併用例
48歳男性、高校教諭。責任感が強く、部活動の顧問就任後からイライラとほてりを伴う不眠が出現。甘麦大棗湯で情緒面はやや改善するも不眠が残存。黄連解毒湯を追加したところ、5日ほどで不眠が改善しました。その後は両剤を頓服で使用しています。

黄連解毒湯は実証向けで、体力があり胃腸が比較的強い人に適します。また、漢方薬の中でも苦味が非常に強いことで有名です。味の説明をせずに処方すると、内服継続が難しくなることがあります。

副作用として、間質性肺炎、肝機能障害、黄疸が報告されています。特に山梔子を含む漢方薬の長期投与では、腸間膜静脈硬化症に注意が必要です。腹痛、下痢、便秘、腹部膨満感、便潜血陽性などがみられた場合は中止し、精査を行います。

黄連解毒湯には解毒作用があるため、晩酌習慣のある方では「二日酔いしにくくなる」ことで、かえって飲酒量が増えることがあります。
また、苦味が強いため、説明を受けたうえでも内服が困難な場合は無理に継続せず中止します。

こころの治療薬ハンドブック 2016年版 柳田浩執筆分 より引用しました

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