食品からできたやさしい漢方
「気持ちが不安定で、急に泣きたくなる」
「興奮しやすく、眠れない」
「子どもの夜泣きが続いている」
こうした症状に、昔から使われてきた漢方薬が
甘麦大棗湯(かんばくたいそうとう)です。
甘麦大棗湯はどんな漢方?
甘麦大棗湯は、とてもシンプルな処方です。
含まれている生薬は、たった3種類。
- 甘草(カンゾウ)
- 小麦(ショウバク)
- 大棗(タイソウ/なつめ)
いずれも神経の高ぶりを鎮め、気持ちを落ち着かせる作用があるとされています。
ショウバクは「こむぎ」、タイソウは「なつめ」、
カンゾウは醤油や味噌の甘味料としても使われる生薬です。
そのため、甘麦大棗湯は
「食品から作られた漢方薬」と表現されることもあります。
どんな人に使われる?
比較的体力が低下していて、
- 気持ちが高ぶりやすい
- 不安が強い
- 眠れない
- ひきつけや過敏な反応がある
といった状態に用いられます。
特に、「強い薬は使いたくないけれど、つらさはある」という場面で選ばれることが多い漢方です。
古典に書かれている甘麦大棗湯
『金匱要略(きんきりょうりゃく)』には、次のような記載があります。
「婦人、蔵躁、しばしば悲傷し、哭せんと欲し、
かたち神霊のなすところの如く、しばしば欠神す、
甘麦大棗湯これをつかさどる。」
ここでいう「蔵躁(ぞうそう)」とは、
感情の起伏が激しく、突然泣いたり興奮したりする症状を指します。
臨床での使いどころ
私の経験では、「婦人、蔵躁、しばしば悲傷し、哭せんと欲し、かたち神霊のなすところの如く、しばしば欠神す、甘麦大棗湯これをつかさどる」これは 個人的には片頭痛発作時に呂律が回らなく、酔った様な状態を呈する患者さんがまれにいて、まさに「かたち神霊のなすところの如く、しばしば欠神す」の状態です。女性の片頭痛発作の状態を『金匱要略』はすでに記載していたのではと思われます。すごいですね。
ですから、
- 片頭痛発作時に、呂律が回りにくくなる
- 片頭痛発作時に軽い躁状態のような前駆症状が出る
といった場面で甘麦大棗湯を用いることがあります。
また、小児の夜泣きに効果を示すこともあり、
年齢や症状を見ながら使われることがあります。
用法・用量について
成人では、
1日7.5gを2〜3回に分けて、食前または食間に内服します。片頭痛発作の数日前から調子が高くなるパターがわかっているような方にはその時期に内服するようにお願いしています。
副作用と注意点
甘麦大棗湯は、
カンゾウ(グリチルリチン酸)を1日量あたり約5gと多めに含みます。
そのため、
- むくみ
- 血清カリウム値の低下
- それに伴うミオパチー(筋力低下)
が起こることがあります。
以下の方には投与禁忌です。
- アルドステロン症のある方
- ミオパチーのある方
- 低カリウム血症のある方
漢方薬であっても「薬」であることを理解し、
必ず医師の管理のもとで使用することが大切です。
まとめ
甘麦大棗湯は、
- 感情が揺れやすい
- 興奮しやすく眠れない
- 子どもの夜泣きや過敏な反応
といった場面で、やさしく神経を落ち着かせる漢方薬です。